何度も失敗した経験が未来の自信に繋がっていく。

放送メディア部 VTRグループNISHIO

2014年6月入社

取材日:2022年1月 南吹田倉庫にて

前の職場で人生のキーマンとの出会い。
VTRに魅せられたきっかけ。

西尾さんはVTRのお仕事をされて9年目だとか。関西東通に来る前も、映像関連のお仕事だったんですよね?その時からVTRのお仕事もされてたんですか?

VTRは年に1回だけでしたね。高校野球の地区大会だけ。年に1回だから、操作もわからない事が多くて。

なるほど。

自分が在籍中にお世話になったVEさんって、2022年の北京オリンピックのチーフVEを担当されている方なんですよ。そんな人だから、当時からスポーツに力を入れたい!っていうVEさんが結構多い環境でした。その人達と気が合ったこともあり、仲良くしていただいて。年1回しか触らないので練習させてください、と制作スタッフでお願いしてVTR機器を技術さんの部屋に組んでもらって。暇さえあれば、そこに座りに行って「今日も練習したいです」なんて言って、素材を再生してもらって自分たちであーだこーだ言いながらソロの練習するみたいなことをしていました。

西尾さんがVTRの世界に入るきっかけになる人がいらっしゃったんですね。その方に今でも現場で会ったりするんですか?

ちょくちょく会いますよ。会ったら当時の話に花を咲かせて。例えば現場でエンドロールVTRとか作るようになるじゃないですか。そしたら「あのお前がそんな風に出来るようになったのか」って。 さらに「ここの設定違ってて、倍速がちょっとおかしいんですけど」って言ったら「お前に言われると思わんかった」って。(笑)

いいですね、そういう再会。では、前の職場から関西東通に移った理由というかきっかけってありますか?

年に1回ぐらい高校野球の仕事があったんですけど、2人体制のスローVTRだったんですよね。当時の私みたいな、ド素人のスタッフがまず1人。そのペアを関西東通からどなたかお願いします、って話になってて。今も関西東通にいらっしゃるスペシャリスト達の仕事を初めて直近で見たんです。私は、ちんちくりんな感じで作業やってるんですけど、かたや横でチャキチャキやってるのを見た時にかっこいいな、これやりたいなって。「これだけがやりたい」って強く思いました。 で、関西東通の入社試験受けました。

写真:西尾さん

意を決して飛び込んだニガテな世界で、
初めて自分の「やりたい」を見つけた。

その当時、関西東通はどういうイメージでした?

やっぱり技術っていうイメージは強かったですね。その時の自分は制作スタッフだったし、大学も文系・教育系だから全然違うしで、いわゆる畑違いのところに行って、どこまでついていけるんだろうっていう。
ちなみに大学では現代学部だったんですけど、小学校の教員免許も取れるところで。もともとは教師になりたくて、その大学行ったんですけど蓋をあけてみたら全然で……。(笑)

なるほど、当初は「教師」という方向もあったけれど、この業界に魅力を感じて?

魅力がこれがまたですね、感じてなくて。

あ、魅力を感じてなくて。

むしろ、私はすっごい苦手だったんですよ。「何かを作り出す」ことが。自分で発想して提案して作り出す、みたいなのが苦手で。だけど、それを仕事にしなかったら、ずっとその分野から逃げ続けるんだろうなと思って。だから前職の放送局に入った時は、苦手分野だからこそあえて仕事にしようと思って。それで制作を選んだんです。でも在籍中の3年間、制作業を結局好きになれなかったんですよね。

なのに、関西東通に入ったと。それは一体どうして?

3年間制作スタッフをやったんですけど、やっぱり苦手なものは苦手で。ただその中で逆にスポーツをやるときだけは楽しかったんですよ。そこだけは楽しいって思えて、一番やる気が出た。だからこそ、スポーツのスローVTRをやろう、やりたいって決心しました。

写真:西尾さん

9年目でぶつかった「チーフとは」の問い。
たとえ嘘でも余裕を見せたい。

VTR業務に携わって9年目の西尾さん。去年、大きいゴルフ中継のチーフVTRを任されましたが、その大役を務めた後の率直な感想聞かせてください。

自分は全然頼りないチーフだろうなと。このゴルフ中継で自分をステップアップさせたい後輩もいるはずなんですけど、その子の成長を見てあげる余裕も全然なくて。それが申し訳ないなと思ってます。他の先輩がチーフなら、色々指摘されることでこの子が伸びるチャンスがあったかもしれないのに、私はそんなところに余裕がなさすぎて、声をかけてあげられないことによってその子の成長の芽を潰してるんじゃないかって思いました。

初めてのチーフでしたもんね。では前回の反省を経て、今後はどういう風な心持ちで挑もうという目標はありますか?

嘘でもいいからもうちょっと余裕をかませるようにしようと。(笑)
いっぱいいっぱいな雰囲気が伝わると、たぶん後輩も不安になるだろうし。余裕のなさをもうちょっと隠して、どっしり構えたいなと思っています。

チーフには何が必要だと考えますか?

何でしょうね……。チーフやってる最中から「チーフって結局何なんだろう」って思って、終わったんですよ。たとえばチーフの仕事って、事前にシステムとのやり取りで連絡をとって、システム図面作って、現場いったら、本番中に指示をするのもあるけど、1〜2年生ばっかり連れてるわけじゃないから全部が全部指示しなくても自分で考えてもちろんやってくれるし。本番終わったら、次は車の段取りですよね。誰々は先に帰らせて──とか。そんな名もなき業務をやってると「チーフって何なんだろうな」って考えちゃう。

そうですね。VTRでのチーフであれば車の采配はチーフが絶対仕切らないといけない仕事じゃないですよね。その現場にTDがいればTDの仕事ですもんね。で、結局結論がでないままと。

出てないんですよね。最終責任を取るのはもちろんですけど。

写真:西尾さん

心がけていることは先入観を持たないこと。
下調べしすぎないで目の前の出来事に臨む。

ではスローオペレーターとしてVTRマンとして、今後国際大会などの大きな業務に携わってゆく中で心がけてることがあれば教えてください。

スポーツの現場では、思い込みや決めつけのような固定概念は持たないようにはしてますね。その日その時何が起こるかわからないし、それをどうにか自分がVTRとして表現しないといけないんですよね。この方法が本当に正解かどうか分からないですけど、下調べしすぎず余計な情報はいれないようにして、本当に目の前で起きたことをハイライトやエンドロールなどでちゃんと表現できるように、と心がけています。

今まで何百という現場に携わってらっしゃる西尾さん。1番印象に残ってる現場について教えてください。失敗談でもいいですよ。

じゃあ、失敗談ですけれど。入社2ヶ月後にゴルフ中継に行ったんですよ。
ハイスピードカメラのカメラマンがいて、私がそのハキ出しで付いて。入社2ヶ月目だったから、まず何を撮ったら良いかもわからない状態だったんですけども。カメラマンについて行ってピコピコ、ハキ出しするんですけど、撮ってるのに全然トリガーも打たないし、ハキ出ししないから、めちゃくちゃカメラマンに怒られて。4日間ぐらいの大会だったんですけど、一日中ずっと怒られてるんですよ。ハキ出しのタイミング押さえろとか。内容が撮れてないとか。
毎日ホテルに帰ってもボロボロで。えんえん泣いて。だけど夜って「みんなでごはん行くぞ」って言われるじゃないですか、だから、正直いやだけど、行くしかないと思って、とりあえず行って。ごはんから帰ってきてまた泣いて。泣きながらベッドで歯磨きしてて、歯ブラシをくわえたまま泣き疲れて寝てたことも。(笑)

NOTE

ハキ出し……ハイスピードカメラの場合、撮った映像はカメラにぶら下がっているリモコンを操作することで収録。その映像を撮影の合間に中継車などに送り出します。映像を出すのもVTRのハキ出し担当がカメラのリモコンで操作をせねばなりません。

写真:写真:西尾さん

衝撃的な4日間だったんですね……。

でも怒られたことに対して、当時のカメラマンに対して理不尽には思わなかったですよ。できない自分の不甲斐なさに打ちひしがれながら、正直「2ヶ月でできるわけないだろう」とも思いながら。(笑)

あはは!初心者に何求めてるんだ、ってことね。(笑) 入社早々に関わった、このゴルフ中継が一番印象に残ってる仕事なんですね。

そうですね。失敗談は鮮明に覚えてるものですねぇ。

「あの人に付いていけば間違いない」と言われる
スペシャリストの仕事に刮目。

今後の西尾さんの目標教えてください。他の部署が気になったりしますか?

他の部署はないですね。不器用だから幅広くはできないと思うんですよ。自分が。

じゃあ、道を極めると?

うん、それしかないと思うんですよね。

誰か目標にしてる方はいたりしますか?この人みたいになりたいとか。

先輩におられますね。いつか追い越したい人が。今年のゴルフ中継は、自身で振り返るとすごくボロボロだったんですよ。2本目から初めて入って、一番最後のゴルフ中継の時に一応私がチーフで。
今年初めて入った時に、その方がチーフで自分がセカンドくらいの立ち位置だったんです。一転、最終の中継で自分がチーフになったとき、先輩に倣って同じようなシステム組んで、同じ作業量を自分に振ったんです。そしたら自分は全く出来なくて、心もボロボロで帰ったときに「やっぱり先輩はすごいな。あの人1人でどうやってあの作業量を普通にさばいとったんやろ…?」と思って。心のどこかでちょっとずつ近づけてるかなって思っていた時もあったんですけど、正直まだまだ。全然だめだなって。

まだまだ目標は高いと。目標にしたい人が他社の人だったら年に2~3回しか会えないかもしれないけれど、同じ会社にいるっていうのはすごいことですよね。

そうですよね。今「先輩ってすごいな」って改めて痛感しているのはもちろん、それは東京のVTRの人にも言われるんですよ。「あの人についていけば間違いない」って。そういうのも聞くと、同じ大阪にいてよかったなと思います。すごい人が近くにいて、その人に怒られようと褒められようと、目の届くところにスペシャリストが常にいるっていうのはそれだけで恵まれてるなと思いますね。それを活かさないと……。

継承していきたいですよね。

そうですね。ちょっとでも先輩の要素を吸収していかないと。

写真:西尾さん

関西東通の仕事ってどういうところが面白いですか?

テレビの業界自体がそうなのかもですけど「これが正解!」っていうのがはっきりしてないからこそ、難しいところでもあり楽しいところでもあると思っています。正解がないからこそ、1試合1試合をどう表現するかというのは作り手によって全然違うんですよね。答えがないところを自分なりに表現出来るのは面白いですね。

これから関西東通に入ってくる学生さんに向けてメッセージがあれば。

部活でもサークルでもバイトでもなんでもいいので、学生時代に色々な人と関わっておく方がいいと思います。この業界だから、という視点ではないんですけど、結局最後は人間力や人間性になるのかなって。仕事ができなくてもキャラで乗り切れることもたくさんあるし。今はとりあえず色々な人がいるところで、なんでも色々やった方がいいっていうのは思いますね。おじちゃん、おばちゃん、若い子……誰とでも。

それが仕事に繋がっていくと?

繋がると思いますね、私は。

写真:西尾さん

CREATOR'S VOICE
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